研究紹介

専門分野:いちおう生態学
研究キーワード:淡水魚類・・・

研究テーマ

1. タナゴ亜科魚類の繁殖生態
 タナゴ亜科魚類(Acheilognathunae)は、生きた淡水二枚貝の鰓内に卵を産み込み、その仔魚は自身の卵黄を吸収し終えてから貝外に泳出するという生活史を持つ(図1)。そのため、タナゴ亜科魚類は産卵宿貝を巡る種内・種間の競争が生じている。本研究では、貝内のタナゴの死亡に影響を与える要因とメスの産卵宿主の利用様式を明らかにし、その産卵宿主利用の適応的な意義を明らかにすることを目的としている。

(1)貝内におけるタナゴの死亡要因について
ー貝内のニッポンバラタナゴにおける季節的な死亡に影響を与える要因ー
 貝内のタナゴの死亡に影響を与える要因に注目し、小規模の池に生息するニッポンバラタナゴ(Rhodeus ocellatus kurumeus)を用いて野外調査を行った。その結果、貝内のタナゴの死亡率は、産卵期の後半ほど、より成長した仔魚ほど、貝内のタナゴの密度がより高い貝ほど、より大きな貝ほど高かった。これは酸素を巡る種内競争とタナゴと宿主との競争、池内の水温の季節的な上昇による夜間の溶存酸素濃度の季節的な低下、高水温と成長によるタナゴと宿主の酸素要求量の増加により、タナゴの酸素要求量の閾値を下回ったときに酸欠で死亡したと考えられた。一方、遊泳できないタナゴの貝からの吐出が、産卵期の前半ほど、より若いタナゴほど、高頻度に観察された。これはタナゴの貝からの吐出防止形質である卵黄突起の未熟な期間が、低水温のため発生が遅れて長くなったことから、生じたためと考えられた。タナゴの最適な産卵の時期は、水温に依存する2つの独立な要因、仔魚の成長速度と池の溶存酸素濃度とのバランスによって決定されていると示唆された(原著論文4)。

(2)タナゴ亜科魚類の宿貝利用様式

ー研究材料ー
 ニッポンバラタナゴ
 アブラボテ
 ヤリタナゴ
 カネヒラ
 シロヒレタビラ
 アカヒレタビラ(山陰個体群)
 イチモンジタナゴ

2. ドンコ科魚類の生殖前隔離機構
ー研究材料ー
 ドンコ
 イシドンコ

3. イソハゼにおける性的二型の進化についての研究(現在、このテーマの研究は続けていません)

 性的二型の進化は、雄間競争や配偶者選択などの性選択に由来する(Andersson 1994)。魚類においては様々な分類群の雄に、背鰭第一棘条の伸長が見られるが(Nakabo 1993)、この雄の伸長した背鰭第一棘条の役割については明らかになっていない。そこで、この背鰭第一棘条の長さの季節消長と産卵期との関係および、背鰭第一棘条の長さと雌の好みの関係を明らかにすることを目的に、イソハゼEviota abaxを材料として月一回の野外調査と雌の配偶者選択実験を行った。
 野外において、雄は5月から7月にかけて背鰭第一棘条が伸長した個体が見つかったが、それ以外の時期は伸長した個体は見つからなかった。一方、雌はすべての期間、背鰭第一棘条の伸長した個体は見つからなかった。本種の産卵期は5月から7月までであることから、雄の背鰭第一棘条の伸長は、求愛のための性的二型であることが確認できた(原著論文3)。
 本種の求愛行動は1)オスがメスに接近する、2)オスがメスを巣に導く、3)オスが巣の中で求愛しメスが巣の中に入る、の3つの段階に分かれる。それぞれの段階で、メスはオスに従うか、逃げるかの行動をとる。水槽実験において、第1・2段階において、オスの求愛行動に対するメスの好意的な反応の割合を背鰭棘状の伸長した部分を除去前と後で比較した。最初に接触した時(第1段階)に、第一棘状の長い時の方が短い時よりメスが逃げずにとどまっていた割合が高かったが、第2段階では差がなかった。つまり長い背鰭棘条は、求愛行動の前半部でメスの選択性を高めることがわかった(原著論文2)。

ー研究材料ー
 イソハゼ