馬毛島の自然

 馬毛島は、種子島の西沖合12Hに浮かぶ平坦な無人島です。 周囲12km、面積8.5km2の小島ですが、黒潮と北西季節風の影響で寒暖差が大きく、北方系と南方系の様々な植物が生育しています。この小島で確認されている野生植物種は431種にも上がり(佐々木他,1959)、面積あたりの種数は群を抜いている上に、固有種ホソバアリノトウグサHaloragis walkeriも報告されています。海岸部の樹木は風衝樹形やシカの摂食による`作品`が延々とつづくなど、独特の景観が出来上がっています。
 またこの島は鳥類の渡りのコースにあたり、草原性の種以外にも、魚のダイビングキャッチを見せてくれるミサゴ、ハヤブサ類、クロサギ、イソヒヨドリ、アカヒゲ、アカショウビン、アオバト、ヒクイナやツルクイナ(らしき種)など、様々な種が毎年確認されています。またエリグロアジサシの繁殖地として知られるほか、ヒヨドリなどの大群やニホンキジの鳴きあいやディスプレ−もよく見られます。その他、昆虫では、シカと共存する糞虫クロツヤマグソコガネの南限地でもあります。
 そして海には、今も成長中のサンゴ群落や様々な魚類、国立公園候補の理由にもなった豊富な海藻類や岩礁生物群、天然記念物のオカヤドカリ、それに産卵に上陸するアカウミガメやタイマイ、イルカ類やマッコウクジラ等も見られるなど、周辺には大変多様な生物相が残されています。
 このようなすばらしい自然と共に馬毛島を特徴づけるのが、大草原で自由に生きるマゲシカたちです。平らな島の中央には標高71mの丘(岳ノ越・岳ノ腰)があり、その頂上からは島の端から端まで、そしてなだらかに横たわる種子島から、淡く美しい三角形の開聞岳、噴煙を上げる硫黄島、九州最高峰の屋久島まで、360度の大パノラマがひろがっています。(地形と植生)


馬毛島の歴史

 馬毛島は、海岸部がトビウオ漁の基地として使われた以外は、1905年から牧場化が試みられるまで無人島でした。第二次大戦後は開拓団が入植し、住居やサトウキビ栽培などで島の半分ほどが利用され、小・中学校も設置されるなど、往時は500人近くが生活して賑わいました。1953年にホソバアリノトウグサが発見された後、1955年から1975年までは国設特別鳥獣保護区に指定されていましたが、企業による用地買収が進んで1980年には再び無人島となりました。その後市民の間でシカ保護の声が高まり、1986年から県設鳥獣保護区(10年間)となりました(1996年以降は1年ごとの更新という変則的な指定方式となるようです)。
 この間1989年からは、鹿児島市の子供たちが野生の大自然を体験する「無人島体験キャンプ」などが行なわれ、自然教育・社会教育的な利用も行なわれています。また、1977年には島の南部で「椎ノ木遺跡」と呼ばれる弥生期のものと見られる人骨埋葬跡が石斧や土器と共に発見されたほか、後世の墓標、トビウオ漁のための仮住い跡、砲爆訓練用の標的やトーチカなど、様々な時代を証言する歴史的遺産が、まるで野外博物館のように各所に眠っています。

((C)立澤史郎)


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