サンゴ礁は海の生態系の中で 最も生物多様性が高い場所として知られています。多様な藻食性生物が生息し、海藻群落の発達は著しく制限されていますが、多くの種のなわばり性スズメダイ 類は藻食者からなわばりを防衛し、その中に自らの餌場となる藻類群落を維持しています。そのような海藻の畑、すなわち藻園は、実はサンゴ礁の海底の実に1170% をも占めています。これらのスズメダイ類の中で私たちが着目したクロソラスズメダイは、雌雄を問わず個々のなわばりを持ち、一目でそれとわかる褐色の絨毯 のような藻園を維持しています。私たちは、クロソラスズメダイが糸状紅藻ハタケイトグサ純群落の藻園を一年を通して維持していることを発見しました。他の スズメダイ類が多種の藻類で形成される藻園を持つのに比べ、クロソラスズメダイの寄主特異性がとりわけ高いことを示しています。

このクロソラスズメ ダイの特異な 単相の藻園は、スズメダイによる特殊な管理行動の存在を示唆しています。行動観察を行なった結果、クロソラスズメダイは特定の藻類を除藻していることがわ かりました。除藻された藻類と藻園を形成する藻類の種組成を比較し、クロソラスズメダイの胃に含まれる藻類と、腸およびフンに含まれる藻類の種組成を比較 したところ、クロソラスズメダイが消化率の低い藻類を選択的に除藻していることが明らかになりました。この研究は、生物界では極めて稀な、動物による積極 的な植性改変としての除藻行動の発見であると言えます。