単作藻園が維持されるために は、強力な藻食者による摂食と、強力な藻類との競争にさらされないことが必要であるはずです。そこで、クロソラスズメダイの藻園管理を取り除くと、藻食者 がいない条件下でも、単相の藻園が崩壊するかどうかを検証するために、なわばり内にクロソラスズメダイ囲い出しケージを設置し、藻類遷移を追跡しました。 また、藻食者による摂餌がなくなるとハタケイトグサが繁茂するのかどうかを検証するために、なわばり外に藻食者囲い出しケージを設置しました。クロソラス ズメダイを囲い出すと、ハタケイトグサ単相の藻園は一週間で崩壊し、藻類の現存量も低下しました。糸状紅藻が二週間でハタケイトグサの単相を被覆し、その 後、本来除藻される消化率の低い皮層を持つ大型藻類や石灰藻がそれにとって換わりました。なわばり外の藻食者囲い出しケージ内にはハタケイトグサの純群落 は成立せず、パイオニア種のハタケイトグサが初期にわずかに出現した後、糸状紅藻や、皮層をもつ大型藻類、石灰藻に置き換わりました。これらの実験によ り、クロソラスズメダイが除藻を伴なう藻園管理により藻類遷移を押しとどめ、餌として適したパイオニア種のハタケイトグサの、現存量の多い純群落を維持し ていることが明らかになりました。ハタケイトグサはなわばり外では全く見られず、クロソラスズメダイの防衛下のみで繁茂しています。一方でクロソラスズメ ダイは餌をほとんどハタケイトグサのみに依存しています。こうして両者は、防衛という奉仕と同化産物という報酬を交換しあう、栽培共生の関係にあることが 分かりました。
cage